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12月23日 2006年サヨウナラ 一寸自動車時計のお話しです(No.305) 2006年も、もうすぐ終わりですね。過ぎてみると、1年は早いものです。2000年の7月29日に第1回のひとり言を始めて、もう300回を 過ぎました。新聞小説よりはまだましですが、一週間に一度、何かを考えなくてはなりませんので、何時でもその事ばかり思っている今日この頃です。 1950年〜55年頃の自動車には、時計がついていませんでした。今でこそ、ダッシュボードに様々な時計が組込まれていますが、当時はラジオが 付いている自動車もなかったのです。最初は真空管ラジオが搭載されていました。時計も、ぜんまい式のものを、簡易に取付けたものでしたが、その後、 モータードライブ式の時計が開発されて、6V(当時の自動車は、殆ど6V)で回るモーターが歯車の先を、ヒゲぜんまいで引っ張りながら回す形式で、 銀接点でしたから、時間が狂ったり、止ったりは、当たり前でした。 現在は、クオーツ式でアナログもデジタルも、各種いろいろ開発されていますが、今一つ、それぞれの車に見合ったデザインが少ない様に思えます。 自動車評論家のなかでは、この時計について様々な意見がでています。時計の枠か、文字板にその車のネームを入れて欲しいということです。 そして、車を代替した時、時計だけ取り外して、手元に置いて、自分が乗り継いできた車の歴史が解る様にコレクションとして保存しては…との事です。 これは、自動車評論家、三本和彦氏の意見です。 皆様お清やかに良い年をお迎え下さいませ。一年間お世話になりました。有難うございました。2007年は、正月6日からのおしゃべりです。 12月16日 機械式時計は温かい(No.304) 機械式時計に人気が集中してきましたね。最近は、クオーツはあまりにも時間が合いすぎて時間が正確なことが当然の様になってしまいました。もちろん、 日常生活で正確な時間は大切な要因の一つですから、ないがしろにはできません。では、何故機械式時計が、にわかにメジャーになってきたのでしょう。 自動機でどんどん作られていく低価格のクオーツと比較しますと、人間の匠の技がコツコツと組み立てた機械式時計の方が温かみがあり、腕に着けている だけで、その時計を組み立てた職人技の息吹が伝わってくるのです。毎朝腕に着ける時、夜、腕からはずす時手にとってゆっくり眺めることです。 今日一日を振り返る事も出来ます。耳に当てて、音を聞きませんか!! 同じ事の繰り返しになりますが、小鳥の囀り、小川のせせらぎとなって聞こえてくる はずです。一日で良かったことを想い出し、悪かったことを忘れさせてくれるでしょう。セイコーの雫石高級時計工房では、世界レベルでも比類のない 高級機械腕時計を一貫生産しています。そこには、現代の名工として選ばれた、櫻田守、照井清、大平晃、中川昭弘、斉藤勝雄氏らの5人の方が在籍して います。セイコーのホームページは下記の通りです。一度訪ねてみてはいかがですか。 セイコーインスツル株式会社 : http://www.sii.co.jp/ 盛岡セイコー株式会社 : http://www.morioka-seiko.co.jp/ 12月9日 時計のダイアルについて(No.303) 時計の顔といえば、文字板(業界では盤でなく板)のことですね。これについて、専門的な知識はここでは置いておきましょう。しかし、これ位は知って おいた方が良いと思うことだけちょっとお話ししましょう。 貴方の時計をもう一度良く見てみましょう。オール文字、これは1時から12時まですべて数字で示してます。これもアラビア数字とギリシャ文字とに 分かれています。アラビアオール文字、ギリシャオール文字といってます。次に、四所文字(ヨドコロモジ)、これは12時、3時、6時、9時のところ だけ数字が入っていて、あとはバーあるいは丸点になっています。これも、アラビア四所と、ギリシャ四所とあります。その他、多く見られるタイプには、 数字が一つもなく、丸ポツや、バーで示されたものがあります。一般にはバーインデックスと呼んでます。これも、12、3、6、9の4ヶ所に飾りバーを 配して、アクセントをつけたものがあります。最近、それとなく電車の中などで、人の腕を気にしてますが、オール文字の時計を着けている人が多い様に 見受けられます。複数の時計をお持ちの方が増えてますが、デザインを選ぶ時のポイントとして、文字板の表示についても考慮すると良いでしょう。 12月2日 時計のカタログ写真(No.302) 皆さん、時計のカタログ写真をご覧になる事はしばしばあることと思います。しかし、表示の時間を気にした事がおありでしょうか。これを一度気に かけてしまいますと、時計のカタログ写真を見ることが楽しくなります。我が国には、セイコー、シチズン、カシオ、オリエントと時計メーカーが ありますが、これがみんな夫々に違った時間を指している写真を掲載してます。シチズンアナログは10時9分35秒、デジタル腕時計は12時38分28秒、 セイコーアナログは10時8分42秒、デジタルは10時8分59秒が平均的なようです。普段何気なく見ているカタログでも、こんなことを意識して 見ると、なかなか面白いものです。輸入品の中には、全くバラバラで見た目にも汚らしく写っているものもありますが、気をつけて見ると、0.5秒ぐらいの 誤差があり、写真撮りの時、気がつかなかったのかなと思うようなものもあります。メーカーが違うと、こんなところにまでライバル意識が働いているのかな と思い、感心してしまいます。ロレックス10時7分31秒と33秒、ブランパン10時12分33秒、オーデマピケ10時7分37秒と10時8分23秒、 パテック10時8分32秒、ヴァセロン10時9分37秒、オメガ10時8分37秒、オリエント10時9分35秒、撮影したカメラマンと担当者により、 多少の違いが見られるようです。これからは、カタログの写真を見るのが楽しくなります。心して良く見て下さい。 11月25日 (No.301) 先週にお話しした、メカニカルウオッチバイブルの付録のDVDを早速に見てみました。スイス、ETA社製2892−Aという自動巻キャリバーの 組立て作業の映像です。組立ての基本動作の解説で、手際良く作業がすすめられています。全くの素人さんでは理解しにくいところがあると思いますが、 時計技術修行中の人には、為になるかもしれません。何事でも、技を持つ作業には、これで良しという終わりがありません。ですから、このDVDを 見ても満足しないで更なる技術向上の気持ちを忘れないことです。 早いもので、2006年もあと1ヶ月を残して終わろうとしています。今年は1月7日がひとり言の初日でしたが、ヒットカウンターが165,000 でした。1月に約3,500人の方がお見えになって下さってます。有り難いことです。今から200,000人目の方に差し上げる記念品を考えている ところです。 来年の2月7日から、東京銀座の松坂屋で、“第16回世界の腕時計博”が開催されます。近づきましたら詳しくお知らせ致しますので、楽しみにお待ち下さい。 11月18日 お薦めの本みつけました(No.300) 機械式時計について解説している本は、沢山ありますが、今回お薦めする本は、今までには見られなかった、教科書にも参考書にもなるお薦めの一冊です。 (株)スタジオタッククリエイティブ社から発行のメカニカルウオッチバイブル(¥4,200)です。現在市場で最も普及している代表的なムーブメント、 ETA−2892−A2からはじまって、クロノグラフもピラー式とカム式、スプリットセコンド、トゥールビヨン、パペチュアルカレンダー、 ミニッツリピーター、アラーム、それに代表的な人気のクロノグラフ、エル・プリメーロ等々、写真と図解で、分解、組立てまで解説してます。 修行中の方も、これから時計技術を勉強する志をお持ちの方にも、是非、手元においておきたい一冊です。セイコーで高級時計の組立てに関わっている 櫻田さん、大平さん達の作業振りも紹介されています。機械式時計名品50、時計の基本的な扱い方、機械式時計紳士録、時計職人の 存在、時計博物館等の紹介、最後は、機械式時計用語集です。付録には、機械式腕時計の組立て方のDVDが付いています。時計に興味をお持ちの方に、 是非お薦めする一冊です。 11月11日 ロボットの活躍(No.299) 時計工場も、自動車工場も同じ頃と思いますが、1960年頃からラインに人の替りにロボットが入り込んでくる様になりました。それまでは、一人一人が すべての作業をすることになってましたが、1955年頃から、作業分解という事が考えられて、流れ作業で組立てる場合、1人の作業時間が同じになる様に 仕組まれてきました。ラインの流れは、次の人に渡るまでの時間を同じにしなければいけませんので、ある作業では、捻を3本取付けられますが、次の人の 作業では、調整が加わるので、捻は1本しか取付られないこともあります。ラインの流れは、次の人に行くまでに1分かかるとしますと、誰の作業も1分で 片付く様にしなければいけません。ところが、個人差が出てきて、手の早い人は、さっさと終わらせてのんびりしてますが、手の遅い人はあせって作業を します。そんな時は、ラインの責任者の人が良く見ていて、部所を替えたりしてバランスをとります。全員が慣れて上手になった時は、生産性をあげられます からラインの流れを1分から55秒にしたり、あるいは53秒にしたりして、一日の生産量を上げるわけです。この場合の1秒、2秒が、製品のコストに 大きくのしかかってくるのです。 しかし、最近は、この人の手作業でやっていたことがすべてロボットになってしまいました。ロボットに作業をやらせて、人がロボットを管理してます。 時計工場も自動車工場も全く同じです。しかもロボットの方が、人の手より早いのです。組み上がった時計に文字板を取り付け、時、分、秒、針を取り付け、 しかも、カレンダーの日付が替わるところも、ロボットがしっかり合わせるのにはびっくりです。自動車のラインでも、サスペンションのトーイン、 キャンバーまでロボットが見ているのです。便利な世の中になってきましたね。 11月4日 修理がことわられる(No.298) 最近は特に多くなってきたと思われる事があります。それは、他店で修理出来ないといって、ことわられた修理品をお持ちになる方です。それも 必ずといって良いくらい、部品不足で修理不可ということです。交換部品が無いということで修理をことわるということです。しかし、お持ちになった、 ことわられた修理品を拝見しますと、ほとんど部品交換の必要がないものばかりです。一部輸入品専門のサービスステーションでは、修理に預かった ものは、すべて決まった何点かの部品を不良、摩耗にかかわらず交換しているところもある様ですが、特に破損していない場合は、そのまま使用可能な 部品が結構あります。大きく精度に影響したり、使用上不具合がない場合、そのまま洗浄、注油で使用が可能なはずです。ユーザーに負担をかけない様、 気を使った修理をしていますが、部品がないといって、修理をことわるということは、どうにも納得がいきません。難しくて修理ができないので、 何かを理由にしてことわっているとしか考えられません。機械時計の修理技術者が少なくなってきたことは、事実です。時計技術者を養成している ヒコ・ミズノジュエリーカレッジのウオッチメーカーコースの卒業生の就職率が高くなっていることもそれらを物語っているようです。 10月28日 鉄道時計の話(No.297) 私のホームページ上で19セイコー、いわゆる国鉄時計を扱っていますが、これは日本国有鉄道がJRになった為に裏に彫ってある文字が、全部違った 名称になってしまったので、払い下げられたものです。アンティークマニアの中には、この鉄道時計だけを集めている人がいます。旧国鉄マンの お客様から貴重な資料を頂きましたので、お知らせしましょう。 帝国鉄道庁1907年4月〜1908年12月、内閣鉄道院1908年12月〜1920年5月、鉄道省1920年6月〜1943年11月、運輸省 1943年12月〜2001年、国土交通省2001年〜。これは、新橋−横浜間に鉄道が開通してからの親方役所の移り替りです。この下部に鉄道 管理局があります。それは、釧路、旭川、青函船舶、北海道総局、盛岡、秋田、仙台、新潟、高崎、水戸、千葉、東京北、東京南、東京西、長野、静岡、 名古屋、金沢、大阪、天王寺、福知山、米子、岡山、四国総局、広島、門司、大分、熊本、鹿児島となっているそうです。これらの名の入っている 19セイコーを全部探したら、大変なお宝になりますね。 10月21日 街から会話がなくなる(No.296) 個人情報保護法について、ちょっとお話しした事があると思います。今回は時計のお話しと少し離れますが、先日こんな事がありました。 私の家内が街に買物に行った時、横断歩道で信号待ちをして、隣に可愛らしい女の子が並んでいたそうです。見下ろした家内の目と見上げた子供の目が パッチリ合いました。家にいる孫と重なって、同じ年頃かなと思い何年生?と聞いたそうです。しかし返ってきた言葉は、“言えないんです”いう ことだったそうです。学校や家では、知らない人に口をきいてはいけないと教えられているのでしょうか…。 もう一つ、近所の手作りお弁当屋さんの女主人の話です。度々お弁当を買いに来る、地方出身と思える学生さんに、“おくにはどちら?”と聞いた そうですが、これ又返って来た言葉にびっくりしたそうです。“身元調査ですか”と言われたそうです。街から楽しい会話がなくなり、淋しい日本に なってきました。しかし私の住んでいるところは、東京・中野ですが、近所付き合いは結構楽しく、ぬか漬けがおいしくつかったからと言って、ぬか だらけの手できゅうりやなすを一二本持って玄関のベルを押す隣のオバチャン。又、地方にドライブに行った帰りに畑で買ったからとドロだらけの 大根が届くこともあります。まだまだ見捨てたものではないようです。 10月14日 不要の時計を処分するとき(No.295) “質流れ品大処分市”などと銘打って、デパートで催事をやってます。この質流れ品というものは、時計に限らず、安いことは確かです。しかし、 私達専門的立場からみますと、一般の小売店の店頭や、百貨店、一流時計店の販売価格からすれば確かに安いかもしれません。しかし、質流れ品だから 安いのだとばかりはいえないと思います。その他いろいろなルートで仕入れたものもまじっているわけです。輸入品に限っては、正規ルートで輸入 販売されますと、関税の問題で或程度高くなります。輸入時の為替レートの3倍の感覚で、小売価格が設定されていると考えて下さい。それから考えると、 質流れ処分市の価格は安いです。しかしこれは、自分がセカンドユーザーになるという認識を忘れてはいけません。前の所有者がどんな使い方をしていたかは 全く解らないということです。一つの経験の意をこめて、一度質屋の門をたたいてみては如何ですか。買入れ価格は、こんなに安いのかと改めて 思うことでしょう。新品で小売価格の5%〜7%位です。100万円のものが7万円になれば上等です。ひと昔前までは、質値3割、買取り1割といわれて いましたが、今ではすべて質値が買取り価格になってしまいました。流された時のことを考えての事と思います。こんなに安く買取っていますが、 そこには、利益や、会場の費用も入ってくるので或程度の価格(時の相場)になってしまいます。 ヒットカウンタ 190,000番 の方に記念品を差し上げます。画面をコピーして、住所・氏名を記入してお送り下さい。 10月7日 時計を選ぶ(No.294) 時計を購入しようと考えていらっしゃる方は、ブランドで、デザインで、価格で、又は、使用目的でといろいろと選択方法があると思います。 又、ひと目惚れということもあるでしょう。或は記念品として、結納のお返しでなど数限りなく考えられますが、皆さんはどの様にして時計を選んで いらっしゃいますか。最近は、キヨスクでも時計が買える時代になってしまいました。又、中国製の廉価品が巷にあふれています。ICチップが大量生産で 安くなったせいもあるでしょう。安いから必ずしも良くないとは限りません。でんち交換の代金の方がはるかに高いという時計も沢山あります。 しかし考えてみましょう。いくら高価な時計でも、時を知る目的は全く同じです。時を知るだけなら、携帯でもOKです。そうかといって、立派なスーツを 着て、真黒い時計、Gショックなどでは、いくらなんでもひどすぎます。国際会議の席上などでも同じ事がいえるでしょう。又、金ピカピカのギラギラでは、 ちょっと考えものです。1つの時計をいつでもどこでも使い続ける事は、決して良くないこととは言いませんが、何か淋しい気がします。こんな時計が 欲しいなと思ったら、百貨店、専門店、量販店と、くまなく回って、しかも納得のいく価格で求めることが大切です。欲しいと思う商品を何点か記憶して おいて、その価格を調べましょう。お店によって、みんな違います。たまに特売品扱いになることがありますので、慌てずゆっくり調べてからの購入を おすすめします。 9月30日 量販店にはかなわない(No.293) 街の中の時計屋さんがどんどん少なくなってます。後継者がいなくなって閉じる店と、時計が売れなくなってやめる店とに別れてます。大きな量販店や、 時計専門の大型店などが近くにあるお店は、とってもやっていけません。又、後継者で、修理ができる人がいない為に、やむなく店を閉じることも あるでしょう。私の住んでいるところは、中央線の高円寺(阿波踊りで有名)ですが、駅から私の家まで来る間に5軒の時計店がありましたが、 今では、2軒になってしまいました。しかもその中の一軒は、縮小でお店が1/3になってます。これも新宿という量販店が何軒もある場所に10分足らずで 行けるからでしょうね。たまにお客様からの電話で、〜の時計が欲しいのですが、お宅はいくらですか、何%安くなるのか?と聞かれることがありますが、 私のところでは、新宿へどうぞと申し上げてお断りしてます。私のような小規模店では、価格競争には、とうてい参加できません。量販店は数をまとめて、 現金仕入れをしてますので、私達がパラパラと仕入れする価格とは格段と差がついてますし、メーカー内部にも量販店対策部が特別に設けられている ところもあります。小さなお店は嘆いています!! 9月23日 こんな電話が欲しい(No.292) 自分が誰であるかを名乗らずに電話をかけてくる人が大半です。修理相談の電話で是非こんな掛け方をして欲しいという私なりの欲望からちょっと 聞いて下さい。 もしもし○○の誰それと申しますが、修理の件でお電話させて頂きました。父の形見の時計なので、なんとか直して使用したいと思います。時計は、 手元にありますが、どの様に説明すれば良いでしょうか? A)文字板の時計名は? 裏蓋にはどんな数字がありますか? ケースの材質はお解りになりますか? 手巻きですか、自動巻ですか?… この位の事が電話の会話の中で交わしたいことです。又、古くから自分の家にあったものか、フリーマーケットやアンティークショップで買い求めた ものか、友人や知人から譲り受けたものか、それも修理見積もりの目安になるのです。 最近は、ネットで求めた時計の相談が特に多くなりました。ネットで買い求めた品物の中に極まれに見るのですが、中の部品を取り外したものがあります。 しかし、極上品で格安品がたまにある様です。いずれにせよ、ネット上の時計の買い物は、慎重になさって下さい。 9月16日 時計の耐震装置のこと(その三)(No.291) 機械時計の重要な部品を、ショックから守る機構についてお話をしてますが、軸そのものは、極めて細く、0.05m/m〜0.02m/m位の太さの心棒です。 それは、シャープペンシルの芯を出したところを想像して頂くと良く解ります。シャープペンの頭部の部分の1/20位の大きさになったものと思って下さい。 その芯に当る部分を、小さな穴があいた軸受石(人工ルビー等)が支えているわけです。その支えている軸受石を、極めて細い、薄いバネで軽く押さえて いるのです。大きなショックがあったり、強くぶつけた時に、このバネが押さえている移動範囲内で細い軸がかすかに移動し、シャープペンでいうところの 太い軸の部が、枠に押さえられてショックを受け止め、細い芯を守っているのです。1945年以前に生産された時計は、殆んどこの機構が組込まれて いませんから、落としたり、ぶつけたりすると、必ずといって良い位芯が折れてしまいます。昔の時計修理の作業には、この折れた芯を交換することが、 大変に多く、大勢の職人さんは、この芯の交換作業を重点的に勉強したものです。 9月9日 時計の耐震装置のこと(その二)(No.290) 耐震装置の名称については、やや遅れをとりましたが、セイコーが耐震装置を組込んだ紳士用中三針スーパーを発売したのが1950年の7月です。 この耐震装置は、エプシロンの名称でまだセイコーの社製のものではありませんでした。約1年位遅れて、U型耐震、E型耐震が開発され、その後ダイヤ ショックという名称に変ったのでした。セイコーの耐震装置をダイヤショック、保油装置をダイヤフィクスと名付けられております。この保油装置というのは、 歯車の軸受の油が、長期間良好な状態で保たれる様に設計された機構です。ちなみにシチズン社の保油機構は、パラフィクスと呼ばれております。 時計は落したり、強くぶつけたりすると、天府の心棒が折れて、すぐ止ってしまい、修理代は高価であるということが、ひと昔前までの常識になっていました。 しかし、この耐震装置が開発され、殆どの機械時計には、必ずといってよい位、組込まれています。前述のインカブロック、或はキフフレックスなどは、 世界的な耐震装置の製造メーカーで、これらの会社からこの装置を購入して、自社のムーブメントに組込んでいる時計メーカーは、枚挙にいとまがありません。 9月2日 時計の耐震装置のこと(その一)(No.289) 1950年以前に生産された機械式時計の殆どのものは、落したり、強くぶつけると、必ずといって良い位に、天眞(天府の軸)が折れて止ってしまった ものであった。しかし、1950年ごろから耐震装置が考案されて、天府の軸受に取付けられるようになりました。当初は、高級品のみに取付けられ ましたが、この装置が取付けられている時計が高級品として取扱われるようになったと言った方が早いかもしれません。 この耐震装置には、いろいろ名称がつけられていました。インカブロック、キフフレックスなどがスイスで開発された耐震装置の呼称です。 現在では、我が国でもセイコー、シチズン社なども独自の耐震装置を開発して、組み込んでいますが、耐震装置が普及した頃はまだ開発されず、特許の 問題もあり、耐震装置の部分だけ輸入して組み込んでいた時期もありました。 50年代中頃に、シチズン社が、パラショックの名称で耐震装置を開発し、それを組み込んだ時計を、ヘリコプターから落下させて、それでも 壊れないという大宣伝をしたことが、今でも話題になっているのです。それで、パラショックという固有名詞が有名になってしまい、 アンティショックのことを、パラショックという人が増えてしまいました。スイス製やセイコーの時計について、“これにパラショックついていますか?”と 聞いてくる人もいました。そういえば、スクーターのことをラビットと言っていた時代もありました。 8月26日 健康な時計(その3)(No.288) 私も古い部品は相当沢山在庫しているつもりであるが如何にも数と種類が多すぎて、どうにもならない状態である。青空マーケット特に海外などで 時計のガラクタがあると、必ず買うことにしている。何時か役に立つことがあるからだ。又地方の時計屋さんで古いお店などあると、飛び込んで行って、 事情を話し、わずかな貴重な部品を分けてもらうこともある。こんな時は、山奥で蛤でも拾った気分になる。 文字板については、瀬戸(七宝仕上げ)でヒビ割れしたり、欠けてしまったものは、タイルボンドや、白色鑞で補修をするが完全復元は不可能である。 エナメルやメッキは仕上げのもので、植字文字板(インデックスが取りはずせるタイプ)は、リフィニッシュが可能で、完全に元通りにするのは無理であるが、 限りなくオリジナルに近づけることはできるのである。輸入元を通して、生産国に送り返しメーカーでリフィニッシュすることも可能であるし、又日本国内の リフィニッシュ技術も高度であるので、かなり良い仕上りになる。文字板の数字やインディックが、プレスで盛り上がったタイプのものは、 仕上りがきたなくなって、あまりお勧めはできない。又、ロゴマークやネーミングも新しいものは、凹版を作製しなければならず、結構高価な作業に なってしまう。文字やネームをすべて手書きで仕上げる方法もあるが、これは如何にも手で書きましたよ!!となってしまうので、この味を喜ぶ方以外は これもお勧めはしない。 いづれにせよ、古いものは、古いものなりに、手を加えずそれなりに持っている古さを眺めていた方が良いのではないだろうか。 8月19日 健康な時計(その2)(No.287) 高度な技術に対して、数字で表すことができないのが残念であるが、これはあくまで利用者の評価に依るか、口コミの評判などできめていくしか方法は ない。しかし、一流店とか、メーカーの指定サービス店、輸入代理店などでは、最高級の技術者が揃っているので安心できる。又、修理の原則は、現状復帰で あるから、特に古いものは別として、なるべく純正部品で復元可能なことを確かめてから修理の依頼をすることも大切なことと言えよう。 1945年を境にして、部品の供給度が大きく変化している、つまり第二次世界大戦の前か後ろかに輸入されたか生産されたかに依って、部品の調達に 差がでているのだ。もう一つのボーダーラインは、1960年頃になる。つまり戦前の時計については、部品の供給は、あきらめムードが強く、その後 だんだん度合が良くなり、1960年以降のものについては、外装部品(ケース、文字板、竜頭等)を除いて、まあなんとかなるかな?と言ったところだ。 8月12日 健康な時計(No.286) 以下の文は、ワールドフォトプレス社発行の雑誌に発表してますが、改めてお話しさせて頂くことにしました。 健康な時計とは、どんな時計かな? お年寄りだって元気な人は、毎朝ジョギングしている。腕につけてから一度も落としたりぶつけたり水につけたりした ことがなく、定期的な手入れを高度な技術で保守していたものであれば、何時までも正確な時を刻み続けるのである。そんな時計のことではないだろうか。 しかし落して芯棒を折ったり、水につけたり、汗が染み込んだままほったらかしにしておいたものは、傷み方がはげしい。特に時計の心臓部とも言える 天府の芯棒を折ってしまい、いいかげんな修理で繕ってしまうと、時計そのものの価値も半減してしまうし、寿命も短くなってしまう。一度こうなって しまうと純正部品でも探して交換しなければ元に戻すことは無難かしいのだ。 アンティークものに対して、新しいもののことを、業界では、「新規もの」と言っている。この新規ものを取り扱ったことのある技術者は、 オーバーホールをする時の道具の扱い方に細心の注意をする様に訓練されている。又捻一本一本廻す時や、各部品をピンセットで掴む時も、角度、部分、 力の入れ方に豊富な経験が生かされているのである。その為分解組立を何回繰り返しても、何時までも同じコンディションを保つことができるのである。 8月5日 修理技術者が育たない(No.285) 有名ブランドの修理センターには、一日平均100ヶ〜120ヶの修理品が全国から送られてくるそうです。これを消化するのは大変です。1人の職人が 最初から最後まで1コずつ仕上げるとしたら、50人〜60人の職人を揃えていなければどうにもなりません。ではどうしているかといいますと、受付で 記帳する人、修理見積もりをする人、バンドをはずす人、側を開けてムーブメントを取り外す人、ムーブメントをバラバラに分解する人、ケースとバンドを 研磨する人、ムーブメントを洗浄する人、輪列のみ組立てる人、最後の組立てをして時間を合わせる人、文字板を取付ける人、ケーシングをする人などと いろいろです。修理工房に従って、様々に違いはありますが、作業分解をして、流れ作業でやってます。一貫した作業のできる人は、ほんのわずか2〜3人で、 あとは、分解された作業ができる人ばかりです。これは技術の流出を防ぐ意味もありますが、短時間で作業をこなすためには、やむを得ないことでしょう。 100%仕事をこなす人がポイと辞めてしまうことがあります。他企業から引き抜かれるのです。それを防ぐ意味が大いにあって、流れ、分解作業にしてる のです。ですから技術屋が育たなくなり、街中から時計屋さんがだんだん少なくなってきているのです。東京都内でも時計店がひと頃の1/3になって しまいました。 7月30日 最近困ってます(No.284) 最近社会問題となって考え直そうとしている事に、個人情報保護法というものがあります。解釈の誤りと思いますが、この法律をタテにとって、 何にも知らせてくれない事が多くなりました。又、電話でもだんまり会話が多くなり、困っています。自分から名前を告げずに用件のみで質問してくる方が 多くなりました。何処の誰かも解らない人と修理について何やかにやとお話をすることは、私にとってはたまらないことです。せめて何処そこの○○ですがと 始めにお話しして欲しいと思います。すっかり話が終わってから“失礼ですが、どちらのどなた様ですか”とお尋ねして、初めて名前が解ります。それも、 名前を尋ねると、ムッとした感じで返事が返ってきます。世の中はこんな風になってしまったのでしょうか。会話の中に楽しみが沸いてこないのです。 一通りの説明が終わっても、ありがとうございましたの言葉も聞こえないのです。淋しい限りです。 私のところは、子供達と孫4人、大勢で暮らしていますが、毎朝の挨拶から、感謝の気持ちを忘れない様にありがとうございましたの言葉が何時でも 口から出る様に教育しています。修理の仕事でも、使う人の気持ちになって仕上げる事に心掛けていますが、これがなかなか相手に通じなくて、トラブルに なる事が良くあります。何か事が起きると、自分の事はさておいて、すべて相手の仕業にする風習が広がっている様です。困ったことですね!! 7月22日 想い出のユリゲラー対決(最終回)(No.283) コンパスを止めたり、動かしたりするには、強力な磁気が必要であることは理解できる。しかし時計は、磁気の力で止ることはあっても、運針が早まることは 考えられない。ではこの40分も進んだロンジンは、どうしたのだろうか? ロンジンだけが知っている謎なのか? 私の手に返されたロンジンは、再び 時間を合わせ直して、その後順調に何のトラブルもなく動き続けたことを付け加えておく。 ユリゲラーショックは、しばらく治まらず、数日後に、日付の狂ったクオーツも、ロンジンも、一応分解してみることにした。セイコークオーツの日車と 日躍制レバーの部分は、顕微鏡で覗いてみたが全く異常は認められず、油切れもなく、正常に駆動することを確認した。又ロンジンも、全部バラバラにして、 部品一ヶ一ヶをこれまた顕微鏡で見たが、クオーツと同じ様に何の異常も発見することはできなかったのである。 ひと口に念力と言って片付けられているこのパワーは、一体何なのだろうか? 某自動車メーカーのコマーシャルで最近再びブラウン管に現われている ユリゲラーを見る度に、30年前の1975年7月24日日本テレビ木曜スペシャルに出演したことを想い出しています。 7月15日 想い出のユリゲラー対決(その6)(No.282) 私の差し出したロンジンは、彼の右手の人差し指と親指でバンドの端をつままれてぶら下がっていた。時計本体には、絶対に触れていない。 「俺はこの眼で良く見ているぞ」イカサマなしだぞと言う気で見つめることにした。彼の左手の上に裏返しに置かれた我がロンジン、運命如何と見つめること 数秒、ユリゲラーの右手が握られ、時計の真上、2、3センチ離れたところ、前回と同じ様に、今度はたった一回ぐりっとやっただけだった。 パッと返されたロンジンは、あわれ、40分狂ってしまった。どうだ言わんばかりのユリゲラーの顔は、今でも印象に残っている。一緒に行った問屋の セールスマンも、見事にやられて二人で思わず顔を見合わせてしまった。いやはやである。 何故だろうか? 時計のメカニズムから考えると、物理的解明は不可能である。最も一般的に考えられることは、時計を手にした瞬間に、何らかの指先の 細工で竜頭を引き出して、ぐるりと回して、又押し戻すことだ。しかしこれは絶対にやっていなかった。私は彼がロンジンを手にした時から、意識して、 瞬きをしないでじっと見つめていたので、見逃すはずはない。それでは一体どうなんだと言うことになる。ぜんまいのトルクが強すぎると、天府の振動数が 異常に早くなり、時計が進むことがある。しかし、わずか数秒で40分も進ませることは、そのメカニズムからは全く不可能と言うより他にはない。 次回は最終回になります。 7月8日 想い出のユリゲラー対決(その5)(No.281) リハーサルを含め、4時間も一緒に居たので、片言ではあるがユリゲラーと会話をかわすことができる様になった。都内のホテルに泊まっていた ユリゲラーから電話があったのは、その二日後である。第二のドラマはこの時から始ったのである。話はこうである。本国の家族に時計を土産に買って 帰りたいので世話して欲しいということであった。そこで私は、自分のところの在庫品より、問屋の品を沢山持っていった方が良いと考えて、 取引先のセイコーの卸問屋に頼み、セールスマン付で大型トランク2ヶ、計150のセイコーの時計を用意した。指定した時間にホテルに行き、 フロントから電話をかけてお互いに確認してから部屋に入れてもらった。挨拶もそこそこに彼はいきなり私に私の腕時計をはずせと言う。先日のクオーツの 日付が狂ったことを知っているのは私一人である。ここで私の時計を彼の手に渡せば、バラバラになるのではないかと思ったくらいだったが、言われる ままに何が起こるか解らないなと思いながらも彼の手に渡した。その時の時計は、ロンジンの手巻きキャリバー847のステンレスケース、黒トカゲ バンド付であった。挨拶代わりに念力ショーを披露してくれるということになったのである。 7月1日 想い出のユリゲラー対決(その4)(No.280) その場に居合わせた人は、誰一人気がつかなかったのであるが、カレンダー日車が動いていたのだ。しかも替わるはずがない時間帯に、今日と明日の日付 文字が3時位置の窓の中に半分ずつ仲良く見えているではないか。びっくりして、右手人差し指でポンとはじいてみたら、明日の日付に替わってしまった。 まあ、そこまでは良かったとしよう。しかしドラマはまだ続くのである。 それはポケットの中に忍ばせておいたスペア時計にまで、ユリゲラーの念力が及んでいたということである。ポケットの中のもう一ヶの同型のクオーツも、 全く同じように日付が半分ずつになっているのが解ったのは、スタジオの外に出てからである。背筋に何かゾクッとしたものを感じた。そしてまたもや指で はじいたら、先の一ヶと同じ様に日付が翌日に替わったのであった。日車送りのメカニズムから考えても、日躍制レバーと日車の歯の山が頂点で止っていた ことになる解であるから全く不思議ということになる。しかも二ヶ共同じ様な替わり方で、その中の一ヶはユリゲラーの計り知る意外のところにあった ものである。ユリゲラーの念力を云々することは別にしても、とにかく何かがある。他の人間とは違う何かを持っていることだけは確かである。 ユリゲラーが手にしたクオーツがもし止ってしまっていたら、私のポケットに入れておいたもう一つのクオーツも止っていたかもしれない。そして、 ユリゲラーは何も言わなかったけれども、私のポケットにもう一ヶ同じものが隠されていたことを知っていたのかもしれない。 |
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