ひとり言バックナンバー No.1〜54
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10月20日 鑑定作業の辛いこと (No.54)
 東京千代田区三番町に、ジャパンウォッチラボという名の会社を設立して1年半になります。 オークションに出品する時計の、コンディションリポートを作成する仕事をやっています。 もちろん、オークションで落札した時計のアフターサービスもやっていますが、 出品する前の鑑定は大変な作業になります。
一番に参っていることがあります。 これは、皆さんから出品希望で送られてきたり、持参なさる方がいらっしゃるわけですが、 その手元に届いた時計を、10ヶから20ヶ位を鑑定する毎に手を洗わなければならなくなります。 手から酸っぱい香りが漂ってくるのです。汗と垢の臭いです。 出品する時計についている汗と垢で、手がくさくなってしまうのです。 常日頃の時計の手入れがなされていないまましまっておいて、そのまま出品してくるわけです。
皆さん、夏が終わって涼しくなってきました。 時計についている汗と垢は、乾いた布できれいに拭き取ることにしませんか。 狭い隙間は、爪楊枝などで突付いてきれいにしましょう。 ガラス渕の回りも、ぐるっとひとまわりこすると、ビックリする程垢が取れます。 風防ガラスが曇ったら、ハミガキ粉(チューブでも可)を布につけて、 指先でこまめにこすってください。 アクリルの風防ガラスですと必ずきれいになります。 磨き終わったら良く拭き取って下さい。
一度これをやって味をしめると、年中やるようなことになります。 是非試してみてください。

10月13日 自分の仕事に出逢う (No.53)
 先日全く初めての方から修理をお預かりしたのですが、 修理記録(ウラ蓋に記入してある文字)を見てビックリしました。 13年前に私がOHしているのです。
私としても、13年前の自分の仕事振りをしかと見ることができたわけです。 久しぶりに旧友に逢ったような気がしました。 油のつけ方や、もち具合を見ることができて大変良い資料となりました。 13年前とは時計油の少し進歩して、仕様が少し変わっていますが、 主たるところは変わっていないので、良い勉強ができました。
一週間前位までは暑い日が続きましたが。ここのところめっきり涼しくなってきました。 ところで、皆さんが毎日お世話になっている腕時計、よく見てください。 汗がついて、垢がこびりついていませんか。 バネ棒のところ、竜頭まわり、クロノグラフのプッシュ釦のまわり、 乾いた布でよく拭き取っておきましょう。 爪楊枝の先でシコシコつついてゴミを取って下さい。 腕からはずしたら、時計のバンドの跡が真黒く腕についてはいけません。 赤が黒にならないうちに手入れしましょう。

9月29日 時計人生 (No.52)
 ジャイアンツの長嶋監督が、今季限りで引退することになりましたね。 TVのインタビューで、監督にとって”野球とはなんですか?”という質問がなされていましたね。 これは、どんな職を持っている人についても同じ事がいえると思いますが、 ”人生そのもの”との答えが返っていますね。 物造りの職人技を持っている人は、すべてがそうだと思います。 長嶋監督にとっても同じ事が言えるのではないでしょうか。 監督にお疲れさま、御苦労様と申し上げます。
私にとっても時計は人生そのものです。 5歳の頃から機械に興味をもったのが始まりですから、そうなるでしょうね。 しかし、技術に対しての向上心は留まるところは知らずで、 現在でも技術習得に終わりなし、修行中です。 50年もこの道に関わっていても、まだ新しいトラブルに遭遇します。 ナンダコレハ?と思う故障を発見したときは、山の中で蛤を見つけたような気持ちになるものです。
世界中で何千万個という時計が止まっているのですから、いろいろなトラブルがあって当然と思います。

9月22日 時計技術に終わりなし (No.51)
 どんな仕事でも、執念をもって長い期間続けるということが大切です。 ”継続は力也”という言葉がありますが、全くその通りだと思います。 スポーツの世界でも同じですね。
手職の世界でも、これは”初めあって終わりなし”です。 特に私達の時計技術の習得では、全くこれで良しということはありません。 若い人達の中には、2〜3年で一通りのことが解ってくると、 もう一人前になったつもりでいる人がいますが、不思議なもので、 翌日になると昨日の仕事がチンケに見えてくることがあります。 これは、まだ自分が成長過程にいることであり、完成されていないことに気が付かねばいけません。 私めごときも、まだまだ勉強中と思っていますし、技術の中で完成されたものは何一つ無いということです。
メーカーの組立作業を見てみますと、ザラ組、振付、支付、側付に別けられますが、 これらの作業を一人で全部やる人は殆どおりません。すべてが分業になってます。 その為、夫々の作業に対しては、超が付く程ベテランです。 しかし、4つの作業が全部ベテランという人はおりません。 これは、メーカーやディーラーのサービスでも同じ事が云えてます。 スイスの一流高級時計のサービスでも全く同じです。 なんでもできる人は皆無と言っても良いくらいです。 でも良く考えてみましょう。街の時計店のオヤジさんは、これを全部こなしているのです。 大変だと思いませんか?
今、街の時計屋さんが、跡取りが育たなくて困っています。 東京でも、1年に10軒位店じまいしています。 これは時計店に限らず、手職を伴う職業の方の大きな悩みです。 子供らがハイテク産業に関わって家業を継がなくなっているからでしょうね。
最も時計職人でも、今ではパソコンを立ち上げてホームページを見たり、 メールを送ったりできなければ、どんどん取り残されてしまいます。 各メーカーから来る部品カタログは、すべてフロッピーで送られてくる時代になりました。

9月15日 基礎が大切 (No.50)
 私の従兄弟で、東京築地の有名な日本料理店に板前修業で弟子入りした人がいました。 1935年頃の話です。 初めの頃は店の掃除や水まきから入り、5年間は鰹節削りばかりやったそうです。 5年間に渡り鰹節を削りつづけたという信念は、立派なのだと思います。 私が小学生だった頃に親戚のオバチャンが家に来て良くその話をしてました。 そして或る時、盆休みで帰省して家で鰹節を削ってみせてくれたそうです。 その削った鰹節を土産に持ってきてくれました。 私も子供ながらにその時の事を良く覚えております。 透き通るように輝いている、まるで芸術作品のような鰹節を見た驚きは今でも忘れることができません。
時計の世界でも、一寸話は変わりますが、時計店や修理会社等に就職すると、 少しの差はありますが工具の手入れから仕込まれます。 ドライバーの研ぎ方だけでも、3ヶ月位やらされます。その他ピンセットも何種類かありますが、 購入したままの姿でなく作業し易い様に整形して研磨するのです。
ピンセットについては一寸面白い話があります。 時計技術者ならば皆同じ様に修正、整形しているのかと言えばそれは違います。 そこには個性があるのです。 時計学校で講師をしていた時、何人もの生徒を受け持ちましたが、 同じように教えても夫々全く違う個性があるピンセットに仕上がっているのです。 極端な言い方をすれば、ピンセットを見ただけで生徒の顔が解るとでも言いましょうか、 これは職人の世界に共通していることだと思います。
すし職人、大工さん、バーバー職人と手職の仕事は沢山ありますが、 皆自分だけの工具、道具はしっかりと手入れして布にくるんで大切に保管しています。 道具を見てその職人の腕が解ると言いますが、全くその通りです。
同業者で、自分の工房に入れないという人が良くいますが、その気持ちも解るような気がします。 私の工房にも同業者が遊びにくることがあります。 キョロキョロと部屋の中を見回して落ち着かず、目線の先はいつも工具と道具に行ってます。 他の工房を訪れることがあれば、同じような事になるでしょう。
今回のお話の中で特に強調したいことは、どんな仕事の中でも基礎が大切であって、 家で云うならば土台と同じであるということです。

9月1日 お客様との対話 (No.49)
 現在、東京都千代田区にジャパンウォッチラボという名称で時計修理会社を設立し、 一般時計修理とオークションに出品する時計の鑑定をやっています。
新しい会社は、今まで個人で営業してきた時計修理業務と少し変わりました。 それは、カメラや電化製品でもサービスステーションの窓口対応は、 受付担当の係員がお客様の話を聞いて修理伝票に要点を記入し、 その伝票を添えて修理技術者のところに回しています。 このシステムと同じになったのです。
今までは、お客様の時計に対する思い入れや、こだわり、想い出などをゆっくり聞いてから その時計の修理にかかることにしてました。 しかし、サービスステーションシステムで、業務の規模が拡大してきますと、 営業と修理部門が別れてしまいます。 止まった時計と、一枚の伝票が一緒に手元に回されてきます。 これは今までのお客様との対話が省かれていますので、とても淋しく思います。 全く事務的な修理作業になってしまいますし、完成した時計をお客様にお渡しして 喜ぶ笑顔に接することは出来ません。
又、逆のこともあります。現状復帰がままならず、叱責を受けることもありますが、 それはそれで技術の進歩にも繋がりますし、研究課題として残っていきますので 有難いことと思っています。
村上さんのお話の中にもありましたが、料理の世界と同じく、 時計の世界も初めがあって終わりなしということです。

8月25日 職人になる (No.48)
 決して好景気とはいえない昨今です。 特に最近自分ではっきり”この仕事で一生めしを喰う” と決めている人が少なくなったようですね。 フリーターでもなんとか生活できるということも要因の一つになっているようです。
仕事一筋に生きてきた人達は現在では殆ど50才〜70才位になってますが、 そんな職人達200人を集録した本があります。 TBS土曜ワイドの中で大声で張り上げている山中伊知郎さんが書いた本です。 永岡書店から出版されている”職人になる本”です。 これから何か手職を身に付けたいと思う方は、是非お読みになることをおすすめします。
私も時計の道に入ってもう50年以上過ぎてしまいましたが、 時計そのものに立ち向かっている事もさることながら、 時計に想いを寄せている方々と、時計談義に花を咲かせることに 大変意義の有ることが良く解るようになった近頃です。
時計ファンの方一度集まってみませんか?

8月18日 私の履歴書 (No.47)
 日本経済新聞の朝刊に連載されています”私の履歴書”は私の大好きな欄です。
今月は、帝国ホテルの名シェフ村上さんの手記です。 1ヶ月に渡って連載されるのですが、とっても面白いですね。 そこで私もそれに習って、このひとり言の中で時計屋になろうと思ったことなども 少しお話してみようと思います。
毎年8月になると、戦争の事が話題になります。 中学生だったその頃、学徒動員で軍需工場に行き、機関銃の製作をやっていました。 99式軽機関銃と、92式重機関銃の部品の製作です。 中学三年生で、見上げるように高いフライス盤や3mもある大型の旋盤を使っていました。 その時に受けた教育が、今の時計修理に大いに役立っているのです。 戦争が終わって工場を引揚げる時、マイクロメーターやノギス、ドリルの刃、 スコヤ、トースカンなど沢山もらってきましたが、今でも仕事に使ってます。 半世紀前の工具です。
でも、その工具を使うときは、決まってアメリカ軍の空襲や機銃掃射で逃げ回ったことを想い出したり、 軍需工場が艦砲射撃で滅茶苦茶になった事を想い出します。
8月11日 時計修理にかかる時間 (No.46)
 仕事の関係で、雑誌記者、新聞記者、TVレポーターのインタビューを受けることがあります。 その時必ずといって良い位聞かれることがあります。 それは、一日何ヶ位修理しているか?という質問です。
新規製作の工場ですと、すぐ返事が出来る質問ですが、 一般の修理では決してすぐ返事のできる質問ではありません。 1ヶにかかる時間は、決してきまっていないからです。
単純なOHですと、40分〜1時間半位で片付けてますが、 アンティークウォッチになるとそうはゆきません。 3時間〜5時間、はたまた3日なんていうのもざらです。 いま私のところでお預かりしています修理品は、最短で1ヶ月、 長いもので1年〜2年なんていうのもざらにあります。 部品の手配にスイスオーダーであったり、フリーマーケット探しなんていうのもありますのでそれは大変です。 たまにあちこちの神社で開かれる骨董市などに出かけては、 古くからお預かりしている修理品の部品取りできる古時計をさがしてます。 でも、うまく掘り出し物が見つかったときは、天下を取ったように嬉しいものです。

8月4日 仕事はあせらず (No.45)
 百貨店等の修理部でお預かりした品物については、本日お預かり品は○月○日仕上がりと表記していますが、 私達のところは決してそうではありません。
おおよそ何日ごろ仕上がりますとは記入していますが、極めていい加減です。 こんな事ではいけないのでしょうが、どうも期日を指定されてしまうと仕事が思うようにはかどりません。 良く、何日に出来ると言ったじゃないかといって、ガンガンなじる人がいらっしゃいますが、 その様な方は、即お返しさせて頂いています。
ゆっくり、気が向くままに、のんびりと仕事をさせて頂きたいからなのです。 責められてあせって仕事をすると、ろくなことになりません。 もうこの年齢になりますと、駆け足はやらなくなりました。 ゆっくり歩くことにしています。仕事においてもそうなりました。
スイスの時計技術者は、ミニッツリピーター級ですと、1ヶのOHに1週間かけてます。 それが本当でしょうね!!

7月28日 時計のリサイクル (No.44)
 現在のリサイクル法が施行されるよりずっと前から、自動車業界では同じようなことをやっていました。 レビルトパーツと言うより。解体部品と言って、事故車や廃車より取り外した 使用可能な部品専門に取り扱う業者がいました。 現在では、業者の数は少なくなりましたが、海外に輸出したりして多忙を極めているようです。
さて、時計の場合はどうでしょう。 機械時計の場合は、長期間修理業をやっておりますと、 部品取り専門のいろいろな時計が手元に集まってきます 現在私のところにも、1900年初期からのもので、1000ヶ位部品取り用の時計が集まっています。 コンピュータで整理しているわけではありませんので、必要な部品が出た時は、 山のようになっている時計集団をかき分けて、たった1ヶの部品を探すことになります。
一度でも手にしたことがある時計は、何故か不思議に覚えていますので、 何時間かかっても探し出して使うことにしてます。それも又楽しいものです。

7月21日 最近の時計生産 (No.43)
 廉価品のクォーツ時計が、たまたま保証期間中に止まってしまうとしましょう。
メーカーのサービスでは、その時計は修理せず、新品交換してお客様にお届けしています。 止まった時計は、その止まった原因にもよりますが、まず100%交換になります。 お客の手元に残るのは、ケース、バンド、文字板ぐらいになると思います。
ムーブメントは、5秒〜10秒に1ヶ生産されている品物ですから、 バラバラにして修理するより、はるかに早いわけです。
最近は、自動車業界にもこの様な傾向が表れ、エンジン、ミッション、デフ、その他 レビルトパーツに交換されて、早く修理が上がるよう工夫されているようです。

7月14日 時計の価格 (No.42)
 クォーツ時計に使用する電池は、何ヶ所かのメーカーで生産しています。 夫々特徴があり、良し悪しは決められませんが、一応名の通っているメーカーの品でしたら、 ほぼ間違いなく使用に耐えられると思います。 必ずしもメーカー指定の電池にこだわることはないと思います。
今、100円ショップで時計が買える時代になりましたね。 100円ショップで売られている時計は、当然の事ながら仕入れ価格があるわけです。 その前にはメーカーがあり、そのメーカーは利益を上げて販売していることになります。
100円のドリンク剤が6円とか7円の生産原価と言われている現在、 100円の時計の製造原価は一体いくらなのでしょうね?
恐ろしい世の中になってきました。電池取替えに1000円も支払うのでしたら、 100円ショップで新品の時計が10ヶ買えることになります。

7月7日 モニター電池とは (No.41)
電池の話が続きます。
店頭に並んでいる時計で、電池式のものは、殆どが動いています。 しかし、これらは時計メーカーの工場から出荷された時に組み込まれていた電池で動いているわけです。
工場出荷から、小売店の店頭に並び、ユーザーの手に渡るまで何日かかかります。 中には、何ヶ月、何年というのもあるでしょう。 9999年目の亀の話でもありませんが、購入して数日で止まることもままあるようです。
メーカーではこれをモニター電池と言っています。 この出荷時に組み込まれている電池は、保証の対象になっていないところが多い様ですが、 電池交換1回分は無料と言うお店もあるようですので、 購入時にお店の人に良く聞いておくことも大切です。
トラブルのもとにならない様注意したいものです。

6月23日 電池交換のトラブルA (No.40)
Cについてお答えしましょう。一般には、電池替えのみと言うことでお預かりしても、 パッキングも替えなければいけないということがまま出てきます。 本来ですと、電池替え作業はパッキング替の作業も含まれるのです。 電池替えと同時に、パッキングを替える事はむしろ良心的と言えるでしょう。 カリカリしないで、きちんと支払いをした方が良いと思います。
Dクォーツ時計でも、運針部分はメカ式です。 メカ式であれば、3年〜5年に一度はOHが必要です。 電池だけ入れ替えて使用していても、3回に一度はOHが必要です。 クォーツでも、電池だけでは動き続けてくれません。 デジタル時計でしたら、電池交換のみでOKです。
Eこれは、電池取り替えの作業の途中のトラブルでこうなったと考えられます。 時計店側のトラブルです。どうしてそうなったかを、おとなしく聞くと良いでしょう。 時計店では自分で壊したとは絶対に言いませんから、それなりの理由だけは聞いておきましょう。
自分の時計については、経歴を良く覚えておいて、いつOHしたか、何回電池を替えたか位は 頭の中に入れておいてください。 トラブルに対処するのに大切なことです。

6月16日 電池交換のトラブル (No.39)
 今回は、電池交換時のトラブルについて重ねてお話してみます。
  @電池を替えたら数日後に止まった。
  A電池を替えても動かないと言われた。
  B電池替えで時計ケースにキズを付けられた。
  C電池だけ替える様頼んだのに、パッキンも替える様言われた。
  D電池替えとOHをしなければ無理と言われた。(電池だけでは動かない)
  Eすぐできると思ったら何日も預かられてしまった。

6項目は、思いつくまま記しましたが、まだまだあると思います。
今回は@〜Bについてお答えいたします。
@は、時計ケースを開ける時に、ゴミや異物が混入し、その為に止まった。 又は、他の原因、メカ部分の油異常で止まったものを、電池と間違えて取替えてしまった。 当然止まる運命にあったということです。
Aこれは大変難しいところです。OHの時期がきていたもの。 もう一件は、お店の技術者が間違って回路やコイルをキズ付けてしまい、 何故動かないかを見極めることができず動かないという。 これは、回路やコイルの交換が必要になります。
B結構多いトラブルです。然るべき専門店では見られないトラブルですが、 専門店以外で良く聞くトラブルです。 研磨、再メッキ等で補修できます。
次回は、C〜Eについてのお話です。

6月9日 時計電池 (No.38)
 一部の輸入時計と国産メーカーでは、クォーツ時計に関してメーカー指定の電池使用するように 販売店に対して申し入れをしています。
では、指定の高価な電池でないと時計は動かないのでしょうか?そうではありませんね。
ソニーのラジオにパナソニックの電池を入れても良く聞こえます。 家電メーカーでは、電池の指定制度はとっていません。 どうして時計だけそうなのか、私にはわかりません。 或る輸入ディーラーでは、正規輸入品以外の電池交換に1万円もかかるところがあると聞いています。
時計電池は、粗悪品を除いては全く同等レベルで、名の知れたメーカー品であれば 特に問題になることはないと思います。 メーカー指定の電池でも、提携している会社や子会社に作らせている所が多いようです。 そして、その会社では他のウォッチメーカーの指定電池も製造しているわけですから、 指定とか純正とは一体なんなのかと疑問が残ってしまいます。
一番大切なことは、メンテナンスの技術レベルと作業能力ということになるでしょう。

6月2日 時計の電池交換 (No.37)
 今回は時計電池のお話です。
何年か前までは、時計電池の交換には3,000円位かかりました。 しかし、最近の諸物価の価格破壊でどんどん安くなりました。
カメラ店、クリーニング店、玩具店、キヨスク等でも電池交換を受け付けています。 夫々の店でも、それなりに技術者が担当していることと思いますが、 先日こんなことがありました。
某スーパーで電池交換をしたオーデマ・ピゲのロイヤルオークが、 トラブルで私のところに持ち込まれました。 ケースの止めネジの締め方が間違っていて、とんでもないことになっているのです。 すぐ元に戻して無事事なきを得ましたが、一応そのお店にも手紙で丁寧に 事の成り行きを説明してお知らせしておきました。 特に高級品に関しては、しかるべき専門店で交換したほうが良さそうです。
300円、500円、700円で電池交換といろいろあり、電池のメーカーにも依ると思いますが、 東南アジアで製造された粗悪電池もありますので注意したいところです。
次回はメーカー指定の電池についてのお話です。

5月26日 初期の防水時計 (No.36)
 1950年〜55年頃にかけて一般に市場に出ていた、"WATER PROOF"と文字板に書いてある 品物に関しては、細かい規則もありませんでしたし、取り決めもありませんでした。 ですから、その時代のWATER PROOF WATCHについては、単なるネジ蓋式の時計で、 竜頭には申し訳程度のパッキンが入っているだけのものでした。 もちろん入荷前の防水テストなんかは全くやっていませんでしたから、 お粗末極まりないものだったようです。
60年代後半になってから少しづつうるさくなってきて、本格的なダイバーズウォッチが 巷に出てきました。それでも我が国では本格的ダイバー用のケースを製作できなくて、 欧州から輸入してそれに自社製のムーブメントを組み込んで販売していました。
最近は生活防水ケースがあたりまえになっていますが、当時はまだまだ一般的でなくて、 本格的防水時計は数が少なく、一部ダイバーやサーファー達に愛用されているだけでした。

5月20日 時計の防水 (No.35)
 夏が近づいてきましたね。防水時計やダイバーズウォッチが活躍する時期になってきました。
自分の時計は○○メートル防水だから絶対大丈夫なんて云わないで下さい。 メーカーから新品で出荷されてせいぜい1年間だけのことです。 防水に関して1年の保証があれば、安心して1年間は使えます。 それでも水の中で勢い良く動かしたり、風呂に入ったりは駄目です。 勢い良く動かすと、瞬間には強い圧力がかかりますから、保証耐圧を超えることもあるわけです。
水に潜ることを職業にしている場合は、特にメーカーのサービスを受けて、 耐圧試験を受けた時計をお使いになることをおすすめします。 アマチュアで趣味で水に潜ることをしている方でも、しかるべきサービスを受けたものを使いましょう。
クォーツ式でも、バッテリーを交換した時には必ずパッキンも交換しましょう。 一寸費用がかかりますが大切なことです。ケチケチしないことが重要なポイントですよ!!。
話は変わりますが、TV東京の「開運なんでも鑑定団」に素人目利きとして出演することになりました。 置時計がテーマで、私としては是非とも全問正解したいものです。 結果は番組をご覧になってからのお楽しみとしましょう。 放送は5月29日の午後9時からです。是非ご覧になってください。

5月12日 リダンについて (No.34)
 街行く美しい女性に見とれている貴方がたに!! 時計で言うところのリダンかも知れませんね!!騙されないようにしましょう。 最近は"あゆメーク"が流行っているので、向こうから歩いてくる若い女性は、 みんな浜崎あゆみLOOKですね。どうなちゃっているんでしょう。 ひところガングロでしたが、今は一人もいなくなりました。 原宿、渋谷でもまずお目にかかることはなくなりましたね。 リダンですからしっかり見極めてください。
スイスのとある一流のメーカーの品で、リダン文字板が出回っています。 アメリカで製造されたものが多いと聞いていますが、大変に良くできていて 専門家でも見分けがつきません。 日本の代理店では拒否していますが、この話を自動車に置き換えてみましょう。
ベンツ、BMW等を自分の好みの色に塗り替えて乗っている人は結構多いです。 ベンツ、BMWのディーラーが、これはリダンだから修理などできません、と言うでしょうか? 時計も同じでしょう。個人の好みで赤や黄色に変えて使用しているのですから、 これをいきなりイミテーションと決め付けるのは、如何なものかと思います。 変な世の中になってしまいましたね。
4月28日 時計のリフォームについて (No.33)
 今回は、時計のリフォームについてお話しましょう。 ひと昔前までは、”再生”という日本語を使っていましたが、 何時の間にか”リダン”、”リフォーム”という言葉が使われるようになりました。
これは中古時計がアンティークウォッチに変わった時と殆ど同時期です。 古道具屋がアンティークショップですからね。 落語の演題に、古道具屋の旦那さんは出てきますが、アンティークショップの店主は出てきませんね。
前置きが長くなりましたが、昨今は物を大切にするということから、 又はあらためて古いものを見直す、昔の品物は長持ちすると言ったことから、 長期間世話になった想い出の物をリフォームすることが多くなりました。 家のリフォーム、洋服のリフォームについても良く話を聞いています。
時計の話になりますが、時計では汚れて見にくくなった文字板 (業界では文字盤とは言わないことが多く、昔の職人はモジイタと言っていた。) をリダン(再生)することがあります。 この作業も、ウォッチメーカーの直属工場で行う場合と、町工場でする場合があります。 町工場でも、メーカー直属工場出身の方が経営しているところもあり、 仕上がりは上手で大工場の仕上がりと区別がつきません。
リダンを嫌う人がいますが、家や洋服のリフォームと同じく差別することは無いと思います。 特にアンティークウォッチではオリジナルにこだわる人が多いようですが、 オリジナルもそれなりに良さはありますが、リダンはリダンなりに趣があると思います。 街行く女性のメイクに見惚れることもあるのですからね!!
次回更新はGWの為、5/12になります。では又。

4月21日 想い出のある時計2 (No.32)
 これは私の父が使っていた時計です。セメントの職人だったので、 時計にセメントが沢山ついていますが、落とさないでそのままにして、 中の機械だけ動くようにしてください。と言って修理をお預かりしました。
ケースの回りや風防ガラスは、セメントがこびりついていました。 しかし、これはお持ちになった方のお父様の息吹がそのまま伝わってくるような 姿そのものだったのでしょうね。 この時計を見る度にお父様を想い出していらした事思います。
又、二輪の事故で時計に大きなキズを付けた方が修理に持ってきましたが、 その方もこのキズはそのままにして中だけ動くようにしてください、 とおっしゃいました。これもその時の事故を一生忘れたくないという 想い入れがあったのでしょうね。
皆さん古い時計には、夫々想い出が沢山重なっていることと思います。 特に機械式時計(1970年以前)にはどなたでも何かを持っていらっしゃる事でしょう。 もう一度良く考えて、机の中から見つけ出し、修理をして使ってみませんか?
コチコチという刻音は、聞く人持つ人の心を柔らげてくれます。

4月14日 想い出のある時計 (No.31)
 時計の業界の仲間入りして50年になります。修理でお預かりする品物の中には、 いろいろな想い入れのあるものが沢山あります。
ワールドフォトプレス社発行の"MEMO 男の部屋"という雑誌がありますが、 その中に"修理に来た想い出の時計の謎"というタイトルで一寸したエッセイを書いています。 古い時計を修理にお持ちになる方は、必ずと言って良い程その時計に対して 何かの想い入れがあるようです。
キオスクで買った1,000円のクォーツには想い入れはないと思いますが、 家に永くあった物、祖父・祖母が使っていたもの、結婚記念に夫々の相手方から頂いたもの、 中学の入学記念に父から買ってもらったもの、ヨーロッパ旅行の記念にパリの アンティークショップで買ったもの等々いろいろな想い出があるはずです。
ですから、その様な想い出のある時計は、大切にきちんと修理して使いたいものです。

4月7日 修理の限界2 (No.30)
 時計の修理は、現状復帰が原則です。しかし、時代の新しいもので、 落としたり水につけたりした物以外は、殆どその通りになりますが、 30年も50年も昔のものですと、必ずしもそうはいきません。
まして、100年も経っているものは、特に現状復帰は難しいようです。
各歯車の軸受けの磨耗、軸真(ホゾ)の磨耗、天真(テンプの真棒)の磨耗・形状不備、 ヒゲゼンマイの形状不備、中具合(コチコチという音の左右のバランス)の不備。
他に原因はまだまだありますが、これらを時代を遡って元に戻すことは絶対に無理でしょう。 すべての部品を新品に換えればよいでしょうが、それは無理と言うものです。
ですから古い時計の修理に関しては、ある程度の妥協が必要になります。 汚れ、サビ、キズ、シミ、変色、時間の正確さ、精度の乱れ、操作上のガタツキ、 これらについてパーフェクトな要求をすることは所詮無理と言うことです。

3月24日 修理の限界 (No.29)
 今日は修理の限界についてお話してみようと思います。
私のところに持ち込まれる修理時計は、殆どと言ってよい位時代物が多いです。 そこで80年も100年も経過しているものに、どれだけのこだわりを持つかが 問題になることがあります。
特に精度については、クォーツの精度に慣れている人は、1日10秒差がでても 時間が合わなくて困ると再修理を要求してくることがあります。 又、翌日には止まってしまうと電話がくるので、”ゼンマイをきちんと巻きましたか?” と聞き返すと、”ゼンマイはどうやって巻くのですか?毎日巻かないと止まるのですか?” と答えが返ってきます。 30年以上クォーツの時代が続いていますので、止むを得ないと思いますが、 困ったものですね。
70歳、80歳のお年寄りに、20歳の若者と同じ動作を要求しても所詮無理というものです。 時計においても全く同じですから心してください。

3月17日 修理部品について (No.28)
 私のところに持ち込まれる修理品に関しては、殆どの方が他店に持っていったらば 部品がないので修理ができないと言って断られたとおっしゃっています。
最初から止まっていて壊れた時計を買い求めた品でしたらそんなことあると思いますが、 昔から自分で使っていたものや、我が家に古くからあったという時計であれば、 まずなんとか直るということです。 踏み潰したり、子供が中をつついていじり壊した物以外は、必ずと言っていいくらい修復が可能です。 又、部品を作る技術も発達してきていますから安心です。
極く新しい時代でエンプラを部品材質にしているもので、 部品の供給が終わっている型番に対しては付加となることがあります。 我が国では、その時計の型番が製造中止になってから8年間は部品供給が義務付けられていますが、 その後は廃番扱いになり、部品供給がなくなります。
私たちも、部品取り専用として沢山の古い時計を在庫していますが、それとて限りがあり、 困ることが間々あります。

3月10日 機械式時計[解体新書] (No.27)
 機械式時計[解体新書]についてちょぴり宣伝させてください。 大泉書店(TEL:03-3260-4001,FAX:03-3260-4074)から発売になっています。
今までも数多くの時計に関する本が発行されていますが、 一寸ユニークな内容になっていることは事実です。
時計の歩んできた道、時計はどの様に時を刻むのか。時計が備えているポテンシャル。 機械式時計の有用な機能、複雑機能。精緻絢爛たる意匠。時計師の仕事場から。 等等30項目に分けて解説しています。
又、外国の有名メーカー、製品は沢山の美しい写真とともに掲載。 併せて特別に磯貝吉秀、山口幸徳、二氏へのインタビューも収録しました。 時計に興味をお持ちの方、是非お読み下さいますようお薦めいたします。
これ一冊で時計博士になれますよ!!

2月24日 世界の腕時計博 (No.26)
 お陰様をもちまして、世界の腕時計博(銀座松坂屋)も21日で無事終了しました。
特別展示のロードマーベルスペシャルは大好評で、マスコミの取材も多方面からあって 大きな話題になりました。
松本零士先生の2001年新作も人気の的で、大勢の方に喜ばれました。
又、会期中の時計無料相談コーナーにも沢山の方がお見えになり、 あちこちで断られてお困りの思い出の時計の修理をお受けしました。
大泉書店から、"機械式時計解体新書"という本が発売になりました。 私めが監修をさせていただきましたが、すごく勉強になり幅広く時計のことが解る面白い本です。 是非お読みください。1600円です。

2月10日 グランドセイコーとロードマーベル (No.25)
 現在アンティークウォッチの市場では、初期型のグランドセイコーが人気が高く、 極上品ですと40万円以上しています。 この初期型のグランドセイコーは、マーベルから進化したクラウン(12型)がベースになっています。
安定していたマーベルがベースになって開発されたクラウンですから、更に高度化していました。 それを更にグレードアップしたのがグランドセイコーです。 その中間にあったのが、自動車で言えばセミデラックスとでも言いましょうか、 ロードマーベルであったわけです。
一寸技術のある方か、技術勉強中の方でしたらロードマーベルを研究して、 グランドセイコークラスにチューニングアップすることは容易なはずです。
世界の腕時計博で参考展示されるマイクロアーティスト工房チューニングのロードマーベルにご期待ください。 日本でもこんな時計ができるのだということが良く解ることでしょう。
又同時に、松本零士のメーテル、アルカディア等の新作品が腕時計になりました。 同時に発表します。お楽しみに。

1月29日 世界の腕時計博 (No.24)
 2月15日から21日まで、東京・銀座の松坂屋百貨店で、世界の腕時計博が開催されます。 今回で第10回目ですが、度を重ねる毎に充実していくようです。
今回は、ゴールドウォッチ大会で、金がメーンテーマになっています。 又初参加の大手企業もあり、内容は面白そうです。是非いらしてみてください。
会期中、時計クリニックとして皆様の時計に関する御相談を承っています。 又、皆様一人一人のオリジナル時計の作成も致します。 子供さん、お孫さん、ペットの犬や猫の写真などお持ちくだされば、 それを文字板にあしらってリストウォッチを作ります。 出来上がりまでに2週間ほどかかりますが、自分だけのオリジナルリストウォッチが できるコーナーをお楽しみください。
又、セイコーマイクロアーティスト工房で特別チューニングアップしたロードマーベル (時価200万円)を特別展示する予定です。一見の価値有りです。
1月23日 時計の型番組み違い (No.23)
 一般にあまり知られていませんが、"型番組み違い"という商品があります。 1970年以降はこのような商品は少なくなりましたが、それ以前はは良く見られました。
メーカーから出荷するときに、ムーブメントAは3番のケースと4番のケースに収めて、 文字板はaとbに、針はxとzというように決めますが、 これが何かのはずみか手違いで、組合せが変わってしまうのです。 それが型番違いです。
検査も気が付かず、或いは昔のことですとこの位なら良しとして出荷されます。 こんな品物は珍品になるかもしれませんね。
今年の年賀状で、No.が鉛筆書きの葉書が北海道で発売になり、 一通100万円になるとの話題になっています。 まぁこれ程の事はありませんが、昔は良くこんなことがありました。
何かおかしいなと思ったら、メーカーの資料室に問い合わせしてみることです。 でも資料室でもわからないことがありますよ。!!
では又。

1月17日 イミテーション時計 (No.22)
 今回はイミテーションと型番違いのお話をしてみましょう。
一般にイミテーションとかコピー商品と言いますと、本物に偽せて作った商品とか、 ロイヤリティーを支払わずに別なところでそっくりに作った品物を言っています。 これは、時計の場合ですと、ムーブメントに他社の製品で特に廉価品を組み込んで、 ケースや文字板を本物そっくりに作って販売しているようです。 初めから”これはイミテーションです”と言って販売する場合と、 知らずに買わされている場合とがあるようです。
正規の工場から盗み出したケースや文字版をそのまま使って、中身(ムーブメント)だけ 他社のものを組み込んだ知能犯的なものもあります。 又、ひと目でイミテーションと解る愛すべき品もありますが、 知能犯的な商品は私たちでも騙されてしまうことがあります。 外見だけでは見分けがつきません。 又、良くここまで頭を使って偽物を作ったなとつくづく感心してしまう商品もあります。
次回は型番違いのお話です。
年賀葉書のNoなしのお話に似ています。お楽しみに。

1月10日 修理代金は高い? (No.21)
 時計の修理代金が高いとお思いの方は良くお聞きください。 時計職人の収入は、30才のサラリーマンの平均に近いのです。
サラリーマンは、休日でも給料は出ていますが、時計職人は休んでいるとそれだけ収入がありません。 実際に働いているときだけが収入の源となっているわけです。 一般のサラリーマンは、休日でも給料は出ていますが、時計職人は修理をしないと収入になりません。 ですから、時間給で計算すると集中して高額になってしまいます。 しかし、おしなべて考えると、差程高給はもらっていないようです。
以前にも一度お話したことがありましたが、時計の修理代金はYシャツのクリーニング代より安いのです。 又、女性のハイヒールの踵の皮のへり具合よりも安いのです。
仮に30,000円の修理代で5年使えたと考えてみましょう。1825日で30,000円ですと、1日約16円強です。 Yシャツは1日でクリーニング代100円です。
1日に何回も世話になる時計は、こんなに安くメンテナンスができるのです。 ためらわずにきちんと3年から5年に一度の定期手入れをしてください。
12月26日 メンテナンス時期について (No.20)
 時計に関わる雑誌が沢山出版されていますが、その内容が殆どロレックス一辺倒なのはどうしてでしょうか? 何故ロレックスに傾倒しているのか不思議です。そうしなければ本が売れないという変な話ですね。
先月号のある雑誌に、ロレックスの批判記事が出ていましたが、これは大変面白く読みました。 一社くらいこの位のサムライ出版社があっても良いと思います。
ところで、そのロレックスですが、これは自動巻きの回転トルクが大変強いので、 油が切れても良く巻けるし、時計も動きます。 更に修理代が高いということで、そのまま使い続ける人が多いようです。 手入れなしで5年以上使ってしまいますと軸の磨耗が激しく、ひとたび修理に出すと、部品の交換個所が多く 修理代がめっぽう高くなります。 3年から5年の間には必ず定期的に手入れをすることをおすすめします。
これはロレックスに限らず、すべての機械式時計に対して共通のことです。 クォーツ時計も3回目の電池交換時には、オーバーホールをおすすめします。

12月19日 自己PR (No.19)
 今回は一寸自己PRです。
2001年の1月に、里文(リブン)出版社から骨董雑誌では老舗の「目の眼」という月刊誌が出てますが、 別冊が発行されます。オクルスという名の雑誌です。 特集で「アンティークウォッチ、クロックを手に入れる」のタイトルで、14項目に分けて収録してあります。 海外の骨董事情や、オークション情報など盛り沢山の雑誌です。 お読みくださることをおすすめします。
又、レミントン社からは、時計に関する専門的な内容を含んだ単行本が発行されることになっています。 発売日など詳しくわかりましたらお知らせいたします。
別件で、ワールドフォトプレス社発行の「MEMO 男の部屋」という雑誌があります。 これは毎月27日発行ですが、この雑誌に”修理に来た時計の謎”というタイトルで 一寸エッセイを書いています。店頭で立ち読みでもしてください。 感想などお聞かせ頂ければ幸いです。

12月12日 壊しつづけて (No.18)
 壊しつづけて50年というのが私の人生ですが、振り返ってみれば本当に良く壊しました。
最近医療ミスがTVや新聞で報道されていますが、何故今になって明るみにでるのでしょう。 ここ数年の傾向ですが、昔はなかったのでしょうか。本当に不思議です。 私が子供の頃、知人の医者が遊びに来て、私の父と酒を酌み交わしながら、 ”医者だって200人殺さなければ名医になれない”という話をしているのを聞いた覚えがあります。 この話に似ていますが、時計師だって200個壊さなければ一流の時計技術者にはなれないなと思いました。 物騒な話ですがほんとの話になりそうです。
大分前ですが、世界の腕時計に寄稿していた時、”壊しつづけて40年” というタイトルで書いたことがありますがあれは本当です。 ただし、時計は生命に関わりがありませんから医療よりはマシと思います。 私に壊された方ごめんなさい。
又、時計技術者で私と一緒に勉強したい方、新会社で働いてみたい方ご連絡ください。 年齢は問いません。当社の条件もございますので詳しくお話させていただきましょう。
新会社名称は(株)ジャパン・ウォッチ・ラボです。

12月5日  (No.17)
 修理に永年携わってきましたが、100%パーフェクトに仕上がるということは、 本当に少ないように思います。
間違いのないように、念には念を入れて組上げるのですが、そこは人間様のやること。 絶対ということは全くありません。私めなど、ここのことろまあ年齢のせいもあると思いますが、 失敗も多いようです。お客様から、お咎めの言葉を頂くことしばしです。
特に最近は営業と別になりましたので、お客様と直接話をして修理をお預かりしていれば 良く説明できるのですが、営業マンが中に入りますと、どうしても疎通に欠けることがあります。 ここのところトラブル続きで悩みが絶えません。
何10年も前の時計は。新品と同じようには仕上がりませんし、精度・機能も相当に劣ります。 外見も劣化があり、それなりに感じ取って可愛がって使って欲しいものです。 アンティークの時計だって、女房と同じように古いなりに味があっていいものです。 良い点だけ褒めて労わってあげましょう。

11月28日(No.16)
 少し前のことでしたが、ロレックスのデイトナのOHをお預かりした時のことです。 定期的な手入れということでお預かりしたのですが、中を見てビックリしました。
寒気がする程きれいな仕事をしているのです。 5年も前にOHをしたということでしたが、本当にビックリしました。 私めなんかより遥かに腕の立つ技術者がいらっしゃるのだなと痛感しました。
そんなときは、その方に逢ってみたくなります。そして膝を突き合わせて 心ゆくまで技術談義をしたいと思いました。
現在、オークションに出品するアンティークウォッチを鑑定する仕事をしていますが、 きれいな仕事で仕上がった時計にお目にかかることは全くまれになっていますので、 残念なことと思います。

11月21日 道具ときれいな仕事 (No.15)
 腕の立つ職人の作った服は、着くずれがしないで長い年月に耐えられると言われています。 家具でも建具でも同じですね。
時計の場合は、次にOH(オーバーホール)するまでの期間が長くなるのです。 洗浄の仕方や、油のつけ方で時計の寿命に差がでてきます。 もちろんゴミが入ったり、水につけたりした場合は違いますが、 正常使用ですと、腕の立つ職人がOHした場合ですと 3年以上5年位は使用可能です。
又、手入れがきちんとされた工具でOHした後で仕上がりを見ると、 新品で出荷された時と全く同じ顔であることに気が付きます。
きれいな仕事をした技術者の手が入った後に、次の作業でお預かりした時など、 前に作業した方にお目にかかりたくなる事もしばしばあります。

11月15日 良い道具 (No.14)
 ”弘法筆を選ばず”と言いますが、時計の世界では必ずしもそうではありません。 修理する際、やはり道具や工具が貧弱では良い仕事はできません。
職人の世界で、良い道具・悪い道具ということは、良く整備された道具と そうでないものとに分けられています。 手入れの悪い道具はいかにメーカー品であっても決して良い道具とはいえません。
カンナをかけている大工さんの仕事の中で、削りくずが前方にカンナの幅で 一本に繋がって飛んでいく様、こんな風景見たことありますか? 体中が震えるほどの感激です。 手入れの行き届いたカンナで、しかも年期の入った手で削ってこその仕草ということですね
時計職人の中にもこれに似た事が沢山あります。

11月7日 異業種交流で研究成果があがる (No.13)
 前回にお話しましたように、時計に関する研究は、大学の工学部や機械・電気と その道の専門家が集まって知恵を絞っています。
しかし、30年位前になるでしょうか、経済界で異業種交流が叫ばれるようになり、 企業間でこの会合があちこち開かれるようになりました。
パチンコ店の経営者と話をすれば、パチンコ玉の研磨と時計部品の研磨で 共通の話題になったりするのです。 寿司職人との話ですと、リズムに乗った手の動きが如何に大切なことかが解ります。 板前さんですと、一本の包丁とピンセット一本が話題の中心です。
職業が違っても、必ず何か共通するところがあり、それがヒントになって 更なる発展に繋がっていくことでしょう。
11月1日 時計の精度を乱す要因 (No.12)
 今までに機械式時計を如何に正確な時を刻ませるかということにについては、 世界中の専門家がその研究に取り組んできました。 そして如何に時間が合わないかということも研究され尽くしてきたようです。 時間が合わない敵としては、次のようなものがあります。
・地球の磁場(南半球と北半球の差、西洋と東洋の差)
・姿勢差。ヒゲゼンマイの材質、形状。渦巻きの巻き方。巻き出し角。ゼンマイの材質、形状。 ゼンマイトルクの確保。歯車の形状。歯車の材質。軸真の材質。研磨の状態。 軸受けの形状。軸受けの材質。各歯車類のクリアランスの問題点。脱進機の抵抗の問題。
・気圧。温度。湿度。外部からの不規則の抵抗と加速。
ざっと思い出しただけでもこれだけ沢山ありますが、他にもまだまだあるかと思います。 これらは未だに100%クリアされておりません。 限りなくゼロに近づける為の研究は、まだまだ続けられることでしょう。 皆さん方の中から優秀な研究家が育ってくださることを望んでいます。

10月17日 自動巻について (No.11)
 いくらゼンマイの力が平等で均一であっても、全体に正確な時を刻むとは限りません。 他に、時間がうまく合わない理由は山ほどあります。
自動巻の時計は、腕に着けていればゼンマイが何時でも巻けているので、 ほぼ一定の力がかかっていると考えてよいでしょう。 しかし、100%巻けた状態ですと、スリッピングアタッチメントが作用して それ以上巻けないように滑ってしまいます。 しかもその滑る瞬間には一寸余分な力が加わりますので、 ムーブメントの調整に依っては進み加減になります。
自動車の運転でステアリングをグルグル回していますと、自動巻には絶好の条件となって、 ゼンマイが良く巻けすぎてしまいます。 運転を職業とする人の時計が進みがちなのは、そんな理由にも依るところがあります。 プロドライバーで秒的に正確な時刻の読みを必要とするのでしたら、 クォーツデジタルが良いでしょうね。

10月10日 ゼンマイについて (No.10)
 ゼンマイの力が24時間均一であるということを前回お話しました。 そこで設計の上ではどうしているかと言うことになります。
ゼンマイは、渦巻き状(蚊取り線香と同じ)になった金属でできています。 これを巻き上げてから、ほどけていく力を利用して歯車を動かしているわけです。 少し巻いただけですと力が弱くて歯車は回りませんが、いっぱい巻くと力が強くなってしまいます。 24時間動かす為には、36時間以上動くように考えて作られています。 36時間の中で、4時間目から28時間目位までですと力が均一ですから、 その間だけを上手に使えば良いわけです。
竜頭でゼンマイを巻いていく時、最後に近づくと指先にやや強めの逆の力がかかってきますが、 この時に巻くことを止めれば良いわけです。
自動巻き時計はこれを自動的に調整してますので、手巻き式より力は安定してます。
次回は自動巻きについてです。
10月3日 (No.9)
 19セイコーは発売(1930年)当時から1948〜49年頃までは、切天府が組み込まれていましたが、 その後、金メッキのマザースクリュー(ヒゲゼンマイに関係なく、時間調整ができる)付の天府に切り替わりました。 それに伴って、ヒゲゼンマイも鉄からエリンバー合金に変更されて精度が向上しました。
その後、セコンドセッティングの名称で、0秒位置で秒針がストップして秒修整が可能になり、 鉄道時計としてより使用目的に合うようになりました。 スモールダイアルの上部にSECOND SETTINGとプリントされているものがそうです。
日差は+10秒ぐらいまでは一般的ですが、チューニングをすれば、-3秒〜+5秒位までは追い込めます。
ゼンマイで動く時計は、正確であるポイントの一つに、ゼンマイの力が24時間常に均一であることが 不可欠になっています。 →次回に続く

9月27日 (No.8)
 昭和5年に発売された当時の19セイコーは、今でもアンティークショップでは人気が高く、 希少価値があります。
現在、ホームページ上で扱っている19セイコーは、1950年代後半からの品ですが、 グランドセイコーに次ぐ名機となっています。
まもなく復刻版がシルバーケース収納されてセイコーから発売されますが、ムーブメントに リストウォッチを使用してますので、スモールセコンドがやや文字盤の中央寄りになってます。 本来の姿とは一寸イメージが違うのが残念です。が、デザインはオリジナルに近いものになっています。
現在の技術で初期型の機械式19セイコーを製作すると良いものができると思いますが、 費用がかかりすぎて採算が取れないでしょう。 市場価格では30〜50万円位になってしまいます。
アンティークの19セイコーは、価格も安く、精度も良く、刻音の美しさは聞く人の耳に 安らぎと爽やかさを与えてくれます。小鳥のさえずり、小川のせせらぎです。
時計に興味をお持ちでなくても、是非1ヶお持ちになることをおすすめします。 一家の宝物になります。

9月20日  19セイコー (No.7)
 19セイコーは、昭和5年(1930年)に精工舎が製造発売したポケットウォッチです。
最初は受けはニッケルメッキ、7石、四つバネ式、切天府、巻き上げヒゲ、瀬戸(白支)文字盤で、 ニッケルケースに格納されていました。
これは日本国有鉄道が標準時計として指定していたウォルサム(18サイズ)が入手困難になってきたので、 精工舎が開発を急ぎ世に出したものです。
1940年ごろから、四つバネ式を押鳥式に改良して、15石入りや、中三芯を作るようになりました。 これは、第二次世界大戦の時は、あの世界的名機・零式戦闘機(ゼロ戦)のコックピットに 取り付けられていたことで有名です。
ちなみに、B29にはウォルサム、エルジン、ウィットナーが搭載されていました。
 ※日本本土爆撃に飛んできた、アメリカ軍飛行機の名称
9月12日  イミテーション時計について (No.6)
 海外で生産されているイミテーション時計で、一番多いのがロレックスでしょう。
パテック、オメガ、カルティエ、ブライトリングがありますが、セイコーのイミテーション時計もあります。
こんなもの作って採算取れるのかな?と思いますが、良くできているのでビックリします。 セイコーでは「5スポーツ」やレディスのイミテーションオートマチックを良く見かけます。
イミテーションの時計は、我が国ではそれぞれのメインディーラーに持ち込んでも 修理を断られることが多いです。というより、受け付けてもらえません。
良く私共のところにお持ちになる方がいらっしゃいますが、 これらは正規品(本物)より手間がかかるので全く困り者です。
イミテーションと解っていて購入したものについては、 コレクションとしてお持ちになることをすすめます。
8月26日 (No.5)
 前々回、東南アジアのアンティーク市場の話をしましたが、 これは良好なメンテナンスが行われた品物が極めて少ないということです。
湿度が高く、汗による消耗がはげしく、文字盤の損傷、ケース裏ブタの錆は 特に注意してください。
又、見てくれ(外観)を良くする為に風防ガラスやケースを力強いバフで研磨 したものが多いのも特徴です。
ケースのエッジ(外周、角のハッキリした線)が丸くなっていたり、 滑らかになっているものも要注意です。
針や夜光も再塗装したものが多いので、良く見てください。
メタルバンドにメーカーのロゴマークがついているからといって安心もできません。 あまりきれいで新品みたいなバンドも要注意です
8月19日 (No.4)
 アメリカでは、輸入時計に関して17石までは関税は安いのです。 それ以上の高級品はグッと高くなってしまいます。 その為に、輸出国がアメリカ向け時計はすべて17石に限定しています。
日本国内で販売されている品では、19石、21石、23石が普通であると考えられる時計でも、 何故か17石になっていることがあります。 これらは、アメリカ逆輸入品か輸出流れの品と思っても良いでしょう。
17石入りだから安物とか、悪い時計であると言うわけではありません。 それなりに考えられて作られています。安心してください。
8月12日(No.3)
 東南アジアのアンティークウォッチ市場は目利きさん以外はお勧めできません。
今までに私のところに持ち込まれた修理品で、賞賛できるものは1個もありませんでした。
しかし、英国、ドイツ、フランス等から買い求めた品の中には、”うん、これは良い”と思ったものが沢山ありました。
ヨーロッパの業者の中には、最近アメリカから中古時計を買い付けている人が多くなってます。 コンプリケーションウォッチで、”17石もの”は殆どがそうです。
理由は次回にしましょう。
8月5日(No.2)
 自分の目を信ずるか、相手の言う事を信ずるかがキーポイントですが、 両方信ずる事ができなかったときは、購入をあきらめることです。
或いは、価格が安くて騙されてもいいやと思った時は、賭けのつもりで一か八か 買ってみるのも面白いことです。
ただし賭けですから、負けたらあきらめることも大切です。
ドイツ、フランス、イギリス、アメリカは比較的良い市場かと思います。
西洋堂発行、北辰堂発行の骨董ファン(雑誌)をお読みになることを勧めます。
我が国の骨董界のすべてを網羅している本で、とっても面白いです。
7月29日  アンティークウォッチ購入時の心得(No.1)
 これから少し、アンティークウォッチを購入する時の心得についてお話を続けていきたいと思います。
アンティークウォッチを買い求めようと思う心の中には、何か思い入れがあったり、 昔の想い出につながっていたりするものです。
メーカー名や単なる形状だけに惚れて、衝動買いをすることは止めましょう。
よく外国に行った方、特に女性に多いのですが、形だけや名だけ(特にロレックスが多い) 気に入って、可愛かったからと言うだけで、ただお店の人の言うことを信用して 買ってしまう人が後をたちません。


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